令和4年10月11日に国の水際対策が緩和され、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて海外からの渡航者の規制が強化されて以来、はじめてビザ無しで日本に渡航できるようになりました。また、令和5年5月8日に5類感染症へ移行し、インバウンド需要の回復が益々期待されています。
インバウンド観光は日本の基幹産業の一つであり、少子高齢化が進む中において地域経済を支える重要な事業と言えます。
コロナ前と比較すると、「密を避ける」など含め、旅行に対する考え方は大きく変わりました。このような状況において、今後の「ポストコロナを見据えたインバウンド誘致」について皆さまと一緒に考えていきたいと思います。
①ターゲティングについて
以前までは、ターゲティングと言えば、国籍・性別・年齢等で分類されてきました。しかしながら、現在においては同じ国籍・性別・年齢においても旅行に対する嗜好は千差万別で、特にコロナ後はその傾向が顕著になってきています。
一例として、中国人観光客と言えば、少し前までは「団体・爆買い」といったイメージが強かったのですが、今はFITで文化体験等を好まれる方が多くいらっしゃいます。これまでのイメージに固執し、ステレオタイプでターゲティングを行うと思うような成果が期待できないことも想定されます。
ではどのように考えれば良いか、ここは発想を変えて「どんな旅人に来て欲しいか。」を考えてみてください。
長野県の白馬エリアはパウダースノーが非常に人気で、毎年多くのインバウンド観光客が訪れています。自分たちの地域資源(パウダースノー)を活かし、「パウダースノーが好きな旅人に来て頂く。」というターゲティングは非常に分かりやすく理にかなっていると思われます。
このターゲティング方法の良いところは、好きなもの・ことを求めて来て頂けるため、消費額の向上に加え、口コミによる宣伝効果が期待できます。
このような観点から考えると、色々と課題は多いかと思いますが、滋賀県においてはバスフィッシングを主軸としたターゲティングを行うことは個人的には面白いと思います。
②持続可能性
コロナ以前からサステナブルツーリズムというキーワードがよく見られるようになりました。サステナブルツーリズムとは「持続可能な観光」のことであり、現在だけではなく未来を含めた地域の経済、社会、環境への影響を十分に考慮し、ツーリストや企業、観光事業者、受け入れ側のニーズに対応した観光のことを意味します。
言いかえると、地域の資源である「自然」や「文化」「伝統」、「そこに暮らす人々」を活かして、外からの旅行者を受け入れ、地域経済を発展させること、同時に「自然環境」や「伝統・文化」を守っていくこと、そういったツーリズムということになります。
元々、観光の目的は物見遊山でしたが、時代の流れとともにモノ消費から体験等のコト消費へ遷移し、今は旅行自体の意味や意義が問われる時代となってきました。今後、新たな旅行商品を造成する際は、このような視点を持つことが非常に重要になってくることは間違いありません。
③高付加価値化
コロナ以前において日本政府は2030年の訪日外国人数を6,000万人まで引き上げるとの目標を設定しました。この目標は現在も継続されておりますが、2022年10月11日に総理官邸において開催された、第16回観光立国推進閣僚会議において岸田首相は「インバウンド消費 5兆円の達成」に向けて具体的な政策検討を指示しました。
この事からもインバウンド観光において、量から質への転換が伺えます。そこでキーワードとなるのが旅の高付加価値化です。ターゲットは富裕層が中心となってきますが、必ずしもサービスのラグジュアリー化だけが答えではないと思います。特に欧米豪の富裕層にはお金で直接買えないモノにこそ価値を見出す方々が多い傾向にあります。では、このような方々は具体的にはどのようなテーマに価値を見出すのでしょうか。
(1)解放性
自然、新しい視点、感性を広げるなど、自国でできない体験を通して、新たなアイデアであったり、物事の考え方、真理や原理を追求します。社寺仏閣での体験や、ネイチャーツアーが該当すると思われます。当法人が今後取り組みを予定してるガイド事業においては、特にこの分野にフォーカスしたサービスを提供できればと考えております。
(2)目的意識
自分を高める手段としての旅を追求します。SDGsや社会貢献性の高いコンテンツ、ウェルネスツアー等が該当すると思われます。
※滋賀県は外来魚のリリースを禁止し、駆除ボックスを設置して固有種の保護に取り組んでいます。スポーツフィッシングを楽しみながら持続可能な社会形成に貢献することができます。
(3)つながり
地域、人々、生活、文化(4つの要素)と繋がることを目的とした旅となります。地域により密着できる、農家体験や街歩きツアー等が該当すると思われます。特に、大津市の商店街を歩くツアー(大津百町膝栗毛ツアー)では4つの要素を全て体験することができるのでお勧めです、
令和5年5月8日(月)に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、国内外の旅行機運は益々高まっています。今後のインバウンド事業においては、大阪万博やワールドマスターズ関西など国際的な大型イベントの開催が予定されており、その需要が拡大していくことが期待されます。この機を逃さず、地域の強みを活かした積極的なインバウンド誘客に取り組みましょう。
おまけ
私が本業でお世話になった大津駅観光案内所スタッフのファンさんが令和5年5月末をもって退職・帰国されるということでご挨拶に伺ってきました。日本語、英語、中国語が堪能な彼女にはこれまで様々な事業でご協力頂き、本当に感謝しています。今後のご活躍を祈念しております。お元気で! 謝謝