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公務員の兼業と一般社団法人の設立について〜③公務員による法人設立について〜

 皆さまご無沙汰しております。
 本日はいよいよ公務員による法人設立についてお話しさせて頂きたいと思います。
 まず、公務員が副業・兼業する動機として以下のような内容が挙げられるのではないでしょうか。

  1. 「収入を増やしたい」
  2. 「自分の知識やスキルを活かしたい」
  3. 「自分が活躍できる場を広げたい」
  4. 「様々な分野での人脈を広げたい」

 結論から申しますと、法人を実際に設立して感じたこと(予測も含めて)は以下のとおりです。
 1.は組織や本人の頑張り次第で後からついてくる。
 2.〜4.は内容や組織・本人の頑張り次第で可能。

 ここで地方公務員の兼業について前回までのおさらいをさせて頂きたいと思います。

地方公務員が兼業をするためには、

  • 役員等✖️営利企業→許可が必要
  • 自営✖️営利企業→許可が必要
  • 報酬をもらう活動→許可が必要

 公務員の兼業に関する取組は以前より改善されたと思いますが、その許可内容については未だに限定的です。特に、法的には禁止されていない「営利企業での従事」が認められた事例はまだ少ないようです。

 そこで今回お話しさせて頂く内容が一般社団法人の設立です。
 結論から申しますと、以下の方法で地方公務員の立場であっても収益事業を行うことが可能です。

  • 一般社団法人を設立する
  • 法人の一員として無報酬で事業に従事する

 この場合、報酬を得ていないので兼業許可は不要となります。一般社団法人は非営利団体なので理事や社員等、どのような立場であっても組織に所属することには問題ありません。
 

  • 「何で一般社団法人なの?」
  • 「無報酬ならボランティアと同じ?」

 順番が前後しますが、まずは「無報酬ならボランティアと同じ?」から見ていきましょう。これまでお話しさせて頂いた通り、公務員という立場を有する限り、如何なる報酬を得ようとすると任命権者の許可が必要となります。個人として報酬を受け取らず、事業収入として収益を会社(法人口座)に入れることについては問題ありません。また、公務員の立場でなくなれば、当該法人から報酬として受け取ることが可能となります。

 公務員引退後に報酬を受け取るには一定のプロセスが必要となりますので、また別の機会に説明させて頂きます。
 報酬として受け取らずとも、例えば公務員でなくなった後に法人を解散させて、それまでの利益をまとめて受けとれば良いのでは?と考える方がいらっしゃるかもしれませんが残念ながらそのようなことは出来ません。
 一般社団法人は非営利法人であるため、たとえ社員であっても利益の分配が規制されています。そのため、法人を解散させた際は、清算を行い、残余金については国や地方公共団体等へ寄付することが一般的な流れとなります。
 法人解散に伴う残余金の取り扱いについては定款に記載する必要があり、「社員に分配する」という内容では定款が認証されませんので注意しましょう。

 次に「何で一般社団法人なの?」について考えていきたいと思います。簡潔に言うと「安くて早い!」からです。牛丼チェーンみたいですね(笑)


 詳しく説明させて頂きますと、まず「安い」という部分ですが、法人の種類によって設立費用が異なります。

  • 株式会社:22万円〜
  • 一般社団法人:11万円〜

 一般社団法人を選択すると株式会社と比較して半額程度で法人設立が可能となります。また一般社団法人においては資本金を設定する必要がありません。余談になりますが、株式会社や有限会社であっても、2006年の法改正以降は最低資本金制度がなくなり、資本金1円でも会社が設立できるようになりました。ただし、他の法律によって資本金額の縛りが出てくることがあります。例えば、旅行業法に基づく旅行会社を設立する際は、事業規模や内容によりますが一定額以上の資本金を有することが条件となっております。

 続いて「早い」という部分についてですが、一般社団法人以外の非営利法人としては公益法人等のNPO法人が挙げられます。まずこの二つについて、以下の点から比較したいと思います。

  • 事業内容の制限
  • 設立の手続き
  • 設立に必要な社員の数
  • 設立に必要な時間

 まずは、「事業内容の制限」です。一般社団法人については、事業内容の制限はありません(公序良俗に反するものを除く。)。NPO法人は20種類の特定非営利活動のいずれかを主たる事業とする必要があります。
 次に「設立の手続き」です。一般社団法人は設立登記のみで手続きが完了しますが、NPO法人は都道府県庁等の認証後に設立登記を行う必要があります。
 「設立に必要な社員数」についてですが、一般社団法人は社員2名、役員1名(社員との兼任が可能)で設立できます。一方、NPO法人は社員10名以上、役員3名以上、監事1名以上が必要となります。  
 最後に「設立に要する期間」についてです。一般社団法人は公証人役場や法務局の対応状況にもよりますが、1ヶ月程度で登記が可能です。一方、NPO法人については申請から登記までおよそ3ヶ月程度が必要とされています。

 NPO法人の種類によっては、一般社団法人と比較して設立費用が安かったり税金が優遇されたりとメリットもありますが、事業内容が制限されたり、設立に際して一定数の社員を確保する必要があります。また、事業内容等を変更する際も再度、都道府県庁等の認証が必要になります。

 最後に「設立に要する費用」です。
一般社団法人は、定款認証手数料50,000円と登記に係る登録免許税60,000円の計110,000円程度が必要になります。
 NPO法人については、これらの費用は発生しません。なお、ここでは記載事項証明書や印鑑登録証明書等の発行手数料や、専門家への謝礼報酬等は考慮しておりません。NPO法人にあたっては手続き等が煩雑なため、専門家等への謝礼報酬等が必要になる場合があります。
 以上を踏まえ、「一般社団法人」か「NPO法人」のどちらかを検討することとなります。
 自力で社員を10人以上集めることが困難な場合は「一般社団法人」設立が現実的な選択肢となります。仮に社員が10人以上いる場合は登記までの期間や費用等を総合的に勘案し、「一般社団法人」か「NPO法人」のどちらかを選択することになるのではないでしょうか。
 Studio Biwakoでは設立期間や柔軟な体制及び事業範囲の広さを勘案し、一般社団法人を選択しました。

 次回は「一般社団法人の設立手続き」について解説したいと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました!

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